一般財団法人「女性科学者に明るい未来をの会」

本年の受賞者  第41回(2021年)猿橋賞 

第41回 猿橋賞受賞者 田中幹子氏の研究業績要旨

「脊椎動物の四肢の発生と進化に関する研究」
“Studies on the developmental mechanisms underlying the evolution of vertebrate limbs”

 脊椎動物の手足はどのように形づくられるのか? 田中氏は、発生に進化的な視点を取り入れ、独創的な研究を一貫して進めてきています。
ヒトの手足にはアヒルの足のような水かきがありません。ヒトでは、おなかの中で成長する間に、指の間の細胞が失われるためです。これは指間細胞死として知られる現象です。田中氏は、この現象には、活性酸素が必要であることを示しました。さらに、この発生の仕組みは、動物が陸上に進出して大気中の酸素に晒された進化の過程でできたことを実験的に示しました。
 ヒトの手足は、古代魚のヒレから進化したと考えられています。ヒトの手の骨は根元には1本の骨があり、体とつながっていますが、古代魚のヒレの根元には複数の骨があったとされています。田中氏は、古代魚のヒレの特徴をもつサメを題材に、ヒレから手への進化の過程では、ヒレの前側領域(親指側に相当する領域)よりも後側領域(てのひら側に相当する領域)が広くなっていくことで根元の骨が1本になり、手の形に近づいていくことを示し、その原因となるゲノム配列の変化を明らかにしました。
 ヒトの手足と異なり、サメのヒレの筋肉は、体幹部からまっすぐ伸びたような単純な構造に見えます。ヒトの手足の複雑な筋肉をつくる遊離筋と呼ばれる移動能力のある筋芽細胞は、ヒレから手足へと進化した過程で、サメよりも進化的に新しい生物で誕生したとされていました。  田中氏は、定説を覆し、サメのヒレの筋肉も、遊離筋様な筋芽細胞からつくられることを明らかにし、手足の筋肉の発生様式の起源がこれまで思われていたよりも古い可能性を示しました。
 このように、田中氏は、脊椎動物の手足をモデルにして、その形がどうやって進化してきたのかという生命現象の本質的な課題の一つを独自のアプローチで明らかにしてきました。

 宮城県出身

 

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