一般財団法人「女性科学者に明るい未来をの会」

本年の受賞者  第39回(2019年)猿橋賞 

第39回 猿橋賞受賞者 梅津理恵 氏の研究業績要旨
「ハーフメタルをはじめとするホイスラー型機能性磁気材料の物性研究」
”Study on the physical properties of the Heusler-type

functional magnetic materials including the half-metal-type magnets

 梅津理恵氏は、Mn(マンガン), Fe(鉄), Co(コバルト), Ni(ニッケル)などの遷移金属元素が主たる構成元素となる機能性金属磁性材料の起源解明に向けた基礎研究を行っている。なかでも、X2YZX,Y = 遷移金属元素, Z = 半金属・半導体元素)という分子式で表される、ホイスラー合金と呼ばれる一連の物質群は、形状記憶特性や、超弾性、巨大磁気熱量効果、巨大磁気抵抗効果など様々な機能を有することで知られており、実用材料として盛んに研究がなされている。
 ホイスラー合金のうち、ハーフメタルと呼ばれる特異な電子状態をもつ物質は、電子のスピンの向きによって異なる電子状態を有し、片側のスピンの向きの電子は金属的な状態であるのに対して、反対の向きのスピンをもつ電子は半導体的であることから、伝導に寄与する電子のスピンの向きが完全に揃うことになる。したがって、電子の電荷とスピンを別々に制御して機能性材料として利用するスピンエレクトロニクス分野で非常に有用な材料であると期待されている。梅津氏等は、ホイスラー合金のうち、ハーフメタル物質であるMn2VAl合金について、SPring-8の放射光を用いて、X線吸収分光(XAS)とその磁気円二色性(MCD)や、共鳴非弾性X線散乱(RIXS-MCD)測定を行うことで、その電子状態の観測を行った。特に、ハーフメタル物質における完全な高分解能RIXS-MCD測定は、世界で初めての報告となる。これらの研究成果は、ハーフメタル型物質の電子状態観測に放射光がきわめて有用であることを示している。
 特異な電子状態を有する物質提案の立場では、第一原理計算を用いた理論研究が大きく先行している中、これまで実際に実験から得られる特性は、計算の結果とかけ離れている場合があった。梅津氏等はホイスラー合金の相安定性に関する実験的研究も行っており、二相分離や析出物の出現、原子配列の乱れなどが理想とする特性を引き出せない要因であることを明らかにし、高い磁気特性と相安定性を兼ね備えた磁性材料探索のための重要な指針を与えてきた。


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