一般財団法人「女性科学者に明るい未来をの会」

本年の受賞者  第37回(2017年)猿橋賞 

第37回 猿橋賞受賞者 石原 安野 氏の研究業績要旨
「アイスキューブ実験による超高エネルギー宇宙線起源の研究」
Study on the origin of the ultra-high energy Universe with the IceCube detector

 石原安野氏は、国際共同ニュートリノ観測装置アイスキューブ(IceCube)を用いて、世界で初めて超高エネルギー宇宙ニュートリノ事象を検出するなど、ニュートリノ天文学において顕著な業績を上げた。
 アイスキューブ検出器は、南極点の1立方キロメートルの深氷河を利用し、宇宙ニュートリノを観測する装置である。石原氏は、2004年の建設開始時からアイスキューブに参加し、2012年、世界で初めて高エネルギー宇宙ニュートリノ事象を同定することに成功した。この業績により、石原氏は、2013年に国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)の若手賞(Young Scientist Prize)を受賞した。これは、宇宙線・粒子天体物理学分野では日本人初の受賞である。
 電荷を持たず弱相互作用を介してのみ物質と相互作用するニュートリノは、数十億光年彼方の遠方からも宇宙線放射源からエネルギーを大きく失うことなく我々の銀河系まで直進してくる、宇宙の重要なメッセンジャーである。このためニュートリノを用いて広大な宇宙を探査するニュートリノ天文学は、光などの電磁波観測に立脚した伝統的な天文学では得ることのできない知見をもたらすだろうと1970年代から期待されてきた。しかし、宇宙に存在する高エネルギーニュートリノの量は非常に少なく、2007年に観測を開始したアイスキューブは多くの背景事象に阻まれ、観測開始後数年間は宇宙ニュートリノ信号を観測できずにいた。また、日本のカミオカンデ実験は1987年に超新星爆発からのニュートリノ信号を検出し、2002年のノーベル物理学賞を我が国にもたらしたが、これが2012年にアイスキューブが捉えるまでは唯一の太陽系外からきた宇宙ニュートリノの証拠であった。
 石原氏のアイスキューブによるニュートリノの初検出によって、ニュートリノ天文学のフロンティアは、より高いエネルギー領域、カミオカンデ実験の検出したニュートリノのエネルギーの一億倍以上にまで広がった。このような高エネルギーニュートリノは、宇宙から地球に降り注ぐ超高エネルギー宇宙線の起源に迫ることを可能とする。また、アイスキューブは初検出からの数年間で高エネルギー宇宙ニュートリノのおおよその存在量の測定に成功した。アイスキューブ実験は世界12カ国の約300人の研究者から構成される。石原氏はその柱の一人であり、最初の信号を発見しただけではなく、アイスキューブ実験チーム内で、2010年から超高エネルギーニュートリノ物理ワーキンググループのリーダーを、2012年からは拡散宇宙ニュートリノ物理ワーキンググループのリーダーを務め、宇宙ニュートリノ存在量測定における一連の進展を主導してきた。
 石原氏は、その後も、より高いエネルギーを持つ宇宙ニュートリノ探索を精力的に推進し、2016年には、超高エネルギー宇宙線起源として長年有力視されてきた仮説、すなわち、ガンマー線バースト、あるいは活動的銀河核といった遠方宇宙の放射輝度の高い天体が起源である、という説を覆す結果を得るなど、高エネルギー宇宙像にニュートリノの特性を活かした新たな知見を加えている。 また、アイスキューブ実験の次期計画であるアイスキューブジェンツー(IceCube-Gen2)実験に向けた新型検出器開発の日本における責任者として従来の検出器の約3倍の検出性能を持つ光検出器製作の指揮にあたっている。

静岡県出身

 

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