井戸水は飲める?危険性と使用する際の注意点を徹底解説
昔から親しまれてきた井戸水。
「自然の水だから体にいい」「水道代がかからなくて経済的」といった理由で、今もなお使い続けているご家庭も少なくありません。
しかし近年では、細菌や有害物質による健康リスクが懸念される場面も増えてきました。
特に、乳幼児や高齢者がいる家庭では、ほんのわずかな汚染でも体に影響が出る可能性があるため注意が必要です。
本記事では、井戸水の仕組みや水道水との違いを解説したうえで、見逃せない4つのリスクについて詳しく紹介していきます。
安全に使うためにかかる費用や、安全なお水を飲む方法についても解説しますので、不安に感じている方はぜひ参考にしてみてください。
- 調査員・執筆者木崎 達也大学卒業後、総合商社の海外駐在員として東南アジアのインフラ事業に従事。主に上下水道の設備管理に携わる。その際に学んだ水が生活に与える影響や水質の大切さを広めるべく、帰国後はYouTubeで水に関する情報発信に注力。現在は水に関する経験と知識を活かして、MIZULOGの調査員兼執筆者として従事。
もくじ
井戸水ってどんな水?
井戸水は、地中深くにある地下水をくみ上げて利用する生活用水の一種です。
古くから各地で利用されてきた水源で、現在でも農村部や都市郊外を中心に多くのご家庭で飲用・生活用水として使われています。
とはいえ、「水道水と何が違うの?」「飲んでも大丈夫?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
このパートでは、井戸水の基本的な特徴と、他の水との違い、さらに利用時のメリット・デメリットについて解説していきます。
水道水との違いを解説
井戸水は“天然の水”というイメージがありますが、水道水とはどのように違うのでしょうか?
それぞれの特徴を知ることで、井戸水のメリットや注意点が見えてきます。
以下に、主要な比較ポイントをまとめました。
水の種類 | 井戸水 | 水道水 |
---|---|---|
水源 | 地下水(地中に浸み込んだ雨水や雪) | 地下水または河川水など |
浄水処理 | 砂や砂利、地層による自然ろ過 | 浄水場でのろ過と塩素消毒 |
ミネラル成分 | 水源によってはカルシウムやマグネシウムが豊富に含まれる | 浄水場で一部のミネラルを除去 |
安全性 | 浄水処理や消毒が施されていないため、細菌やウイルスなどの有害物質が含まれている可能性 | 水道法に基づいた水質検査・浄水処理により高い安全性を確保 |
費用 | 水道代はかからないが検査・管理が必要 | 月数千円前後(自治体により異なる) |
災害時の使用 | 使用できる可能性が高い | 断水した場合は使用できない |
日本の水道水は法律で厳しく衛生管理されているため、世界でもトップクラスの安全性を誇ります。
一方、井戸水は浄水処理がされていないため、管理の手間や衛生リスクを伴いますが、水道代がかからない点や災害時でも使いやすい点は大きなメリットです。
また、自然の地層でろ過される工程でミネラル成分を豊富に含むこともあり、お水の風味やまろやかさを感じやすいという魅力もあります。
とはいえ、安心して飲めるかどうかは水質や管理状態によって大きく
見た目ではわからないリスクが潜んでいるケースもあるため、「井戸水は本当に飲んでも大丈夫なのか?」という疑問にしっかり向き合う必要があります。
次の章では、井戸水を飲用する際の安全性について、より詳しく解説します。
井戸水は飲んでも大丈夫?
「井戸水をそのまま飲んでも安全なのか」そう不安に感じる方も多いでしょう。
結論から言えば、飲める場合もあるが注意が必要です。
水道水のように消毒処理がされていない家庭用の井戸水には、細菌やウイルス・重金属・化学物質などが含まれている可能性があります。
見た目や味では判断できず、長年飲んでいても問題が起きないケースがある一方で、健康被害につながる事例も報告されています。
一方で、適切な管理が行われている井戸水は、ミネラルを多く含み、まろやかな口当たりを楽しめることも。
だからこそ、リスクを正しく理解し、必要な対処を講じた上で飲用することが大切です。
井戸水に潜む4大リスクを解説
井戸水は自然由来で一見安全そうに見えますが、適切に管理されていないと健康被害を引き起こすリスクがあります。
特に注意したいのが、以下の4つの汚染リスクです。
- 細菌・ウイルスによる感染症
- 重金属や硝酸性窒素の蓄積
- PFAS(有機フッ素化合物)の摂取
- マンガン・ラドンなど自然由来の有害物質
順に詳しく見ていきましょう。
①細菌・ウイルス(大腸菌・O157など)への感染
井戸水で最も警戒すべきなのが、細菌やウイルスによる汚染です。
大腸菌やO157・ノロウイルスなどが混入すると、下痢や発熱、重症化すれば合併症を引き起こすこともあります(※1)。
原因の多くは、家畜のふん尿や生活排水が地下に流れ込むこと。
浄化槽の不具合による漏出も、汚染につながる要因のひとつです。
日本地下水学会は、最低限の煮沸やろ過、定期的な検査が必須としています(※2)。
特に乳幼児や高齢者、免疫力が低い方は少量の菌でも影響を受けやすいため注意が必要です。
※1厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」
※2日本地下水学会「井戸水から大腸菌が急に検出されました。原因はなんでしょうか?」
②重金属(ヒ素・鉛)と硝酸性窒素の摂取
井戸水には、土地の地層や農業の影響で有害物質が混ざることがあります。
特に注意が必要なのが、ヒ素・鉛・硝酸性窒素です。
ヒ素や鉛は水道法で基準値(0.01mg/L以下)が定められており、基準を超えて摂取し続けると健康被害が出る可能性があります(※1)。
また、硝酸性窒素は化学肥料や生活排水などが原因で地下水に混入します。
特に乳児に影響しやすく、「ブルーベビー症候群」という酸欠状態を引き起こすことも(※2)。
こうした成分は、無色・無臭で見た目では判断できません。
飲用する場合は、必ず検査を受けることが重要です。
※1厚生労働省「水道法第4条に基づく水質基準」
※2環境省「硝酸性窒素等による地下水汚染対策マニュアル」
③PFAS(有機フッ素化合物)の摂取
PFAS(ピーファス)は、有機フッ素化合物の総称で、フライパンのコーティングや消火剤などに使われてきた化学物質です。
水や土に残りやすく、自然にはほとんど分解されません。
環境省は、PFOS・PFOAという代表的な2つの物質について、「合計50ナノグラム/L以下」という暫定基準を設けています(※1)。
海外では健康被害との関連も報告されており、肝機能の低下や免疫力の影響、発がん性の懸念も指摘されています(※2)。
井戸水を使う場合は、地域の調査結果も含めてPFASの有無をチェックすることが大切です。
※1環境省「PFOS、PFOAに関するQ&A集」
※2環境省「PFAS に関する今後の対応の方向性」
④マンガンなど自然由来の影響
井戸水には、人の活動による汚染だけでなく、地層に含まれる成分が溶け込んでしまう自然由来のリスクもあります。
そのひとつが「マンガン」です。
マンガンは体に必要なミネラルですが、濃度が高すぎると神経への影響や、乳幼児の発達に悪影響を与える可能性があると報告されています(※1)。
環境省の調査では、特定の地域でマンガン濃度が基準値(0.05mg/L)を超える地下水が確認された事例も(※2)。
見た目では気づけないため、定期的な検査で濃度を確認することが重要です。
※1環境省「マンガン及びその化合物に係る健康リスク評価について」
※2環境省「令和4年度地下水質測定結果」
危険度アップ!?特に注意が必要な家庭環境
井戸水は適切に管理すれば使用できる水源ですが、体の免疫機能が弱い方や、毎日大量に水を使う家庭ではリスクが高まりやすい傾向があります。
特に以下のような環境では、井戸水に含まれる細菌や有害物質の影響を強く受けやすく、健康被害につながる可能性も否定できません。
日々何気なく使っている井戸水ですが、環境や家族構成によっては見直しが必要なケースも。
どんな家庭が注意すべきか、順に確認していきましょう。
①乳幼児・妊婦の方がいるご家庭
乳児や妊婦は、免疫機能や内臓が未発達な状態にあります。
井戸水に含まれるわずかな汚染でも、体への影響が出やすく注意が必要です。
たとえば、大腸菌や硝酸性窒素などが混入していた場合、成人に比べて早期に症状が現れ、重症化しやすい傾向があります。
特に乳児では、硝酸性窒素の影響により「ブルーベビー症候群」と呼ばれる酸欠状態を引き起こすリスクも。
また、妊娠中の方が汚染された水を摂取すると、胎児への影響が生じるおそれも否定できません。
不安がある場合は、飲用を控える判断が望ましいでしょう。
②高齢者や免疫力が落ちやすい方がいるご家庭
高齢者や持病のある方は、病原菌や化学物質に対する抵抗力が低下しています。
そのため、井戸水の衛生リスクを受けやすい状態です。
たとえば、大腸菌やノロウイルスが混入していた場合、健康な成人では軽症で済むことが多い一方で、高齢者では脱水や腎障害など重い症状に発展するケースも見られます。
治療中の方や免疫が低下している方も同様に注意が必要です。
飲用だけでなく、料理や歯みがきなど口に入る用途にも配慮しましょう。
水の安全性に少しでも不安を感じたら、水源の見直しを検討することをおすすめします。
③井戸水を料理に使用しているご家庭
炊飯や味噌汁、煮物などに井戸水を使用していると、知らないうちに有害物質を摂取している可能性があります。
飲
む量以上に、日々の料理を通じて体内に取り込む量が増えてしまう場合もあります。
「加熱すれば安全」と考える方もいますが、これは注意が必要です。
ヒ素や硝酸性窒素、PFASなどの物質は、熱に強く、煮沸では分解されません。
そのため、「煮沸しているから安心」と思い込んで使っていると、かえってリスクを高めてしまうことも。
これらの成分は、長期間にわたって少しずつ摂取し続けることで健康被害につながるタイプであるため、蓄積には十分注意しましょう。
井戸水を安全に使うにはいくらかかる?費用を解説
井戸水は「お金がかからない」というイメージをお持ちかもしれませんが、安全に使用するためには一定のコストがかかります。
主な費用としては、水質検査の費用やポンプ・設備の維持管理にかかるランニングコストです。
このパートでは、井戸水を「安心して使い続ける」ために必要な費用の目安についてわかりやすく解説していきます。
水質検査の相場は年間5〜10万円
井戸水の安全性を確保するには、定期的な水質検査が欠かせません。
ただし、検査にかかる費用はチェックする項目数や目的によって大きく異なるため、用途に応じて適切な検査を選ぶ必要があります。
もっとも詳しく検査できるのが、水道法に基づく「51項目の全項目検査」です。
大腸菌や硝酸性窒素・ヒ素・鉛・PFASといった有害物質を網羅的に調べるもので、費用の目安は1回あたり5〜10万円ほど。
一方、すでに使用中の井戸の簡易チェックには、11〜27項目程度の検査を選ぶケースもあります。
この場合、検査費用は1〜2万円程度で済むことが多く、毎年の定期検査や生活用水としての安全確認などに活用されます。
飲用目的で使う場合は年1回の全項目検査をベースに、簡易検査を補完的に行うパターンが理想です。
このように、検査の内容や頻度によって金額に幅がありますが、井戸水の安全管理にかける費用として、年間5〜10万円程度を見込んでおくのが一般的と言えるでしょう。
水質検査以外にかかる費用まとめ
井戸水を利用するには、水質検査だけでなく井戸設備の維持費や衛生管理のコストも継続的に発生します。
主な項目は以下の通り。
項目 | 費用がかかる頻度 | おおよその目安費用 |
---|---|---|
ポンプの電気代(電動の場合のみ) | 毎月 | 数百円〜1,000円程度 |
井戸の清掃費用 | 1〜2年に1回程度 | 5万円〜30万円 |
ポンプの交換費用 | 7年〜15年に1回程度 | 10万円〜30万円 |
忘れがちなのが、清掃やポンプ交換など突発的にかかる高額なメンテナンス費用。
日々の電気代は比較的少額ですが、長期的に見ると数十万円単位の出費が発生する可能性があるため事前の備えが重要です。
井戸水を「無料の水」と捉えてしまいがちですが、安全・快適に使い続けるには、それなりの維持コストがかかることを理解しておく必要があります。
井戸水のメリット・デメリット
ここまで井戸水に潜むリスクや、管理にかかる費用について解説してきました。
とはいえ、井戸水ならではの利点があるのも事実です。
このパートでは、井戸水の「良い面」と「注意すべき点」を改めて整理。
井戸水を使い続けるべきか、別の選択肢を検討すべきか。判断の材料として参考にしてください。
- 水道代がかからない
- 災害時にも使える可能性がある
- ミネラル成分を多く含んでおり美味しい
- 水質の安全性が自己管理に委ねられる
- 細菌や有害物質が混入しているおそれがある
- 維持・管理に意外と費用がかかる
メリットとして大きいのは、やはり水道代がかからない点。
使用量が多い家庭では、長期的に見ると経済的なメリットも感じやすいでしょう。
また、断水時でも使える可能性があるというのは、災害対策としても魅力のひとつ。
一方で、見逃せないのがデメリットもあります。
家庭用の井戸水は行政による管理が及ばないため、水質検査や設備管理はすべて自己責任で行う必要があります。
しかも、大腸菌やヒ素、PFASといった健康に影響を与える物質が含まれている可能性があるものの、見た目や味ではわからないのが現実です。
さらに、安全に使い続けるためには年1回の水質検査や、定期的な清掃・設備交換といった費用も発生します。
こうした点を踏まえると、「ただの節約」では済まされない側面があることも理解しておくことが必要です。
コスパ良く安全なお水を飲むならウォーターサーバーがおすすめ!
井戸水は、条件さえ整えば便利で経済的な水源です。
とはいえ、安全に使い続けるには、それなりの手間とコストがかかるのが実情。
「水質検査や清掃の管理までは正直きつい」
「子どもや高齢の家族に、少しでも不安のある水は使いたくない」
そんな方には、ウォーターサーバーという選択肢も視野に入れてみてください。
このパートでは、安全性とコスト面の両方からウォーターサーバーの特長を紹介していきます。
ウォーターサーバーの安全性について
ウォーターサーバーの大きな特長は、衛生管理がメーカー主導で行われている点にあります。
天然水やRO水は、工場でしっかりと品質検査を受けたうえで密封。
家庭に届いた時点で、そのまま飲める状態になっています。
多くのサーバーには、UV除菌機能や自動クリーニング、チャイルドロックなどが搭載。
日常的な衛生管理も、ユーザーに大きな負担がかからない設計です。
特に、ミルク作りや介護など、安全性が重視される場面では心強い存在。
水質を自分で管理する必要がないため、忙しい家庭にもぴったりです。
ウォーターサーバーの費用はどれくらい?
ウォーターサーバーにかかる費用は、主に月額料金と水の使用量によって決まります。
以下はおおよその相場です。
お水の種類 | 月額料金の相場 |
---|---|
天然水(宅配水型) | 4,000円〜6,000円 |
RO水(宅配水型) | 3,000円〜5,000円 |
水道水(浄水型) | 2,500円〜3,500円 |
宅配型は、使う水の量に応じて費用も増えますが、品質の高いお水が自宅に届く手軽さや安心感が支持されています。
一方の浄水型は、水道水を使用するためお水が使い放題でコスパに優れているのが魅力です。
さらに、井戸水と比較したときの“コスパの良さ”もポイント。
たとえば、井戸水を安全に使うには、年1回の水質検査や2年ごとの清掃、ポンプ交換などで年間5〜10万円以上の費用がかかります。
これを月あたりに換算すると、5,000円を軽く超えてしまう計算。
つまり、「コストを抑えたいから井戸水」という選択肢が、実はウォーターサーバーより高くつくこともあるのです。
料金の明確さ・安全性・手間の少なさまで含めて考えると、ウォーターサーバーは理想的な選択肢と言えるでしょう。
よくある質問
- 基本的にはおすすめできません。
井戸水は行政の水質管理の対象外であり、大腸菌やヒ素、硝酸性窒素などが含まれている可能性があります。検査をしていない井戸水は、飲用には適しません。
- 一部のリスクは残ります。
煮沸で細菌はある程度除去できますが、ヒ素や硝酸性窒素、PFASなどは熱に強く分解されません。煮沸だけで「安全」とは言い切れないのが実情です。
- 年1回以上が推奨されます。
厚生労働省は、飲用目的で井戸水を使用する場合は、定期的な水質検査を推奨しています。特に51項目検査は、安全確認の基本といえます。
- 専門業者へ依頼するのが一般的です。
一部の簡易キットもありますが、正確性や検査項目数が限られています。飲用目的での検査は、専門業者による検査が前提です。
- 年間で5万〜10万円程度です。
51項目の検査は1回あたり5〜10万円が目安です。簡易検査でも1〜2万円かかるため、定期的に続ける場合はそれなりのコストが発生します。
- 衛生管理の仕組みが整っています。
出荷前の品質検査や密封ボトル、UV除菌などの機能により、日常的に安心して使用できる設計です。特に家庭内での水質管理が不要なのが大きな強みです。
- 条件によってはコスパ面でも優れています。
井戸水は一見安価に見えますが、検査・清掃・修理などの維持費を含めると、月5,000円以上かかるケースも。ウォーターサーバーの方が安く済む場合が多いです。
まとめ
井戸水には、水道代がかからない、冷たくて美味しいといった魅力があります。
うまく管理すれば、暮らしに役立つ自然の水源として活用できます。
ただし、飲用には注意が必要で、大腸菌・ヒ素・PFASなどの有害物質が含まれる可能性があり、安全に使うには定期的な検査や清掃が欠かせません。
さらに、維持費を月換算すると5,000円を超えることもあります。
そこでおすすめなのが、ウォーターサーバーの利用です。
天然水やRO水、コスパに優れた浄水型など、目的に応じて選べる点が魅力。
水質はきちんと管理されており、日々のメンテナンスも不要です。
井戸水の良さを理解しつつ、より手軽で安心なお水を求める方は、ウォーターサーバーも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
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